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令和8年9月15日作成
自己破産は、自分の借金を帳消しにしてもらう(免責)という手続きですが、一方で、自分が持っている財産は換価して債権者に平等に分けるという手続きでもあります。そのため、一定以上の財産(20万円以上)があれば、破産財団といって、換価し分配するための財産として扱われ、破産管財人によって現金化されることになります。自分名義の預金や不動産、保険の解約返戻金などが代表的なものです。
そのため、例えば申立て前に親が亡くなって、その親の預金や不動産を相続した、ということになると、残念ながらそれらの財産も破産財団に組み込まれ、自分のものではなくなってしまう可能性が高いです。
せっかく親が残してくれた財産を自分の借金のために失ってしまうのは残念ですが、制度上致し方ありません。
では、相続人が複数いて、かつ遺産分割の話し合いが済んでいない場合、つまり相続財産が亡くなった方名義のままで、相続手続きが進んでいない場合はどうなるでしょうか。この場合は、相続財産全体に対して自分の相続分、例えば4分の1などの漠然とした権利自体を管財人が処分していくことになります。例えば、遺産分割の話し合い自体を進めて、破産者の相続分を処分しやすい現金のみにしてもらうとか、不動産を共有で相続して、他の相続人と協力して売却し、本人の取り分のみ破産に組み入れるなどといった、ケースバイケースの対応をしていくことになります。このように、具体的に誰のものと決まっていない未分割であっても破産手続きの対象からは免れません。
破産手続開始決定時に破産者が有する一切の権利・財産は「破産財団」に属すると定められています(破産法34条1項)。遺産分割前の潜在的な相続分(遺産共有持分)も例外ではなく、管財人が管理処分権(破産法78条1項)を行使して、破産者に代わって他の相続人と遺産分割協議を行ったり、遺産分割請求訴訟や共有物分割訴訟を提起するなどして、破産者の持分を換価(現金化)し、債権者への配当原資として強制的に組み込むことになります。
なお、換価が必要となった場合、破産手続きは同時廃止でなく、管財事件となります。
破産者に換価できる財産がなく、特段の調査も不要とみなされると、そういった手続きを省略して簡便に免責まで進む手続きのことです。裁判所に収める費用が安く済んだり、手続きが簡便になることから、破産者にとってはこちらの手続きに進む方が負担が軽くなると言えます。
破産する人に処分すべき財産がある場合、裁判所が選任した「破産管財人(主に弁護士)」が財産の調査・処分・分配を行う手続きのことです。比較的短期間かつ安価に終わる同時廃止とは異なり、半年から1年程度かかることが一般的とされています。費用面においては、破産管財人への報酬が発生するため、破産をする人が最低でも20万円から50万円程度の予納金を準備する必要があります(裁判所や代理人の有無によって基準が異なります)。
管財事件に振り分けられるのかの判断基準として、一定以上の財産(20万円以上)があることがあげられます。相続が発生した際に、例えば亡くなった方が自宅などの不動産を所有していた場合、破産者が取得した相続分(持分権含む)がこの基準を超えるケースが多いため、管財事件として扱われる可能性も高くなります。
せっかくの相続財産を破産手続きで処分されることを避けるために、なんとか工夫をしようと考える方も少なくありません。よくみなさんが考えられるのは、遺産分割協議で自分が一切財産を受け取らない合意を家族間ですれば、つまり全ての財産を他の相続人名義にしてしまえば、破産の対象から外すことができるのでは、というものです。
これについては、残念ながら有効な手段になりえません。
なぜなら、破産直前に本来もらえるはずの財産を自ら放棄・譲渡する行為は、債権者を害する「詐害行為(さがいこうい)」とみなされる可能性があるためです。破産管財人は「否認権」を行使してその遺産分割協議を取り消し、財産を強制的に破産財団へ連れ戻すことができます。つまり、遺産を受け取った他の家族側からすると直接財産の返還が請求され、巻き込まれる恐れがあるということです。
さらに、悪質な財産隠しと判断された場合は「免責不許可事由」に該当し、借金が一切免除されないという最悪のリスクまで生じることになります。
では、自己破産申立て前・開始決定前に家庭裁判所で行う正式な「相続放棄」をした場合はどうなるのでしょうか。
相続放棄は遺産分割協議とは異なり、初めから相続人ではなかったとみなされます。そのため否認権行使の対象とはならず、破産手続への影響はないものとされています。
財産を受け取らない、という内容自体は一緒であっても、両者では法律的な効果が大きくことなることになります。
ただし、相続放棄には期限があり、タイミングが大事です。また、ある一定の行為をしてしまうと相続放棄が出来なくなり(単純承認)、債権者との争いの原因になることもあるため注意が必要です。具体的には以下のとおりです。
自己破産申立て前・開始決定前の相続は複雑なため独断で動かず、一刻も早く担当弁護士や司法書士に報告・相談することが必要です。
遺言書の有無、他の相続人の意向(※)、破産申立てのタイミング、相続放棄の可否など、個別事情によってとるべき最適な対応は大きく異なります。
※例えば、実家などの不動産を共有で相続した場合、破産者の共有持分が破産財団に組み込まれて処分(第三者への売却など)されることにより、最終的に他の相続人(家族)が第三者との共有状態になったり、生活上の大きな負担や影響が生じる可能性があります。
特に「相続放棄」を選択する場合は、3か月という熟慮期間内に家庭裁判所へ申立てを行う必要があり、申立て時期を含めた綿密なスケジュール調整が欠かせないことはもちろん、独自の判断で親の口座からお金を動かしたり、遺産分割協議書に判を押したりすると不利益を被る恐れもあります。
そのため、相続が発覚した時点ですぐに依頼している弁護士や司法書士へ事実に沿って報告してください。
破産手続開始決定「前」に発生した相続財産は処分対象となりますが、破産手続開始決定「後」に親が亡くなって発生した相続財産については、原則として破産財団には組み込まれません。
これは、破産財団に組み込まれるのは、あくまで「破産手続開始決定の時点で破産者が所有していた財産」に限られるという破産法上の固定主義という考えによるものです。
これに対して、開始決定後に取得した財産は「新得財産」と呼ばれ、自由財産として破産者自身が自由に受け取り、管理・処分することができます。
したがって、開始決定「後」の相続であれば、管財人に回収されることなく自分で受け取ることが可能です。
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